クミコさん、まだ絵は描いているの?
と、
ある日ふいに、ハハが尋ねてくれた。
そんなことを覚えていてくれるのは、ハハくらいだと思う。
当時、チチとハハが共に展覧会に足を運んでくれたこともあった。今思えば、よくヨメの趣味に興味を持ってくれたなぁと思う
もうずいぶんと前になるが、
水彩画教室に通っていて
熱心に絵を描いていた時期があった
子ども達はまだ幼稚園とかそんなくらいの頃
なにかを表現したいというか
なにか、子育てと家事以外のことが
したくてしたくてたまらずに
フツフツした湧き上がる気持ちを持て余していたころのこと
夜中に絵筆を握って黙々と白い画用紙に向かっている時間は
どこか別次元にいるような不思議な感覚で
何もかもから解放される貴重な時間だった
こんな風に、ブログを書いたり
どなかかに読んでいただいたりして
ひとと繋がるなんてことがなかった時代
家族といるのに、
なぜかいつも孤独だった
自分の在り方がわからずに
迷子になってひとりで苦しんでいた
あれはシアワセというものだったのだよと、この歳になってようやくわかってよかった
絵筆を握って手を動かしている時間だけは
自分に戻れたような気がしていた
絵の出来は二の次で
無の中に身を置いて浮かんでいるのが心地よかった
でもその後
いろんな理不尽ないざこざがあって
全てがうまくいかなくなり
ある日、
自分が必死に我慢したり頑張ったりして
築いてきたと思っていたものが
あっけなく崩壊した
いや、最初からそれは幻想だったんだろう
それ以来
絵も一切描かなくなっていた
あれから
長い年月が経って
子ども達も大人になり
止まっていた時計の針が再び動き出した
ハハが思い出したように
クミコさん、まだ絵は描いているの?
と尋ねてくれたことで
一気に、離れていた時間が埋まったような
気がした
アリガトウ、オカアサン
また描いてみようかな
今度こそ素直で飾らないわたしのまま
ココにいようと
沢山の遠回りのあとに思った
Thank you for reading my blog.
Sofie KT.
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